俳句(5/12掲載)

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【石母田星人 選】

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天へ天へ床屋のポールぼたん雪  (石巻市小船越・三浦ときわ)

【評】ぼたん雪の大きめの雪片が、花びらのように降る中で、逆に昇っていくものに目を奪われた。理髪店のサインポールだ。赤・白・青の3色のしま模様がくるくると回ってぼたん雪の舞う大空へ昇ってゆく。上五「天へ天へ」の繰り返し表現が巧み。その効果で感覚から心象へ重層的な深みが増している。

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青嵐ヒップホップの手足跳ね  (東松島市新東名・板垣美樹)

【評】今、ダンスは中学の必修科目。ヒップホップダンスに取り組んでいる生徒も多い。この句の対象も若者たちだろう。新緑に彩られた屋外に流れる音楽。それを聞き分けてリズムを刻む。時々ユニークな振り付けが入る。若者たちの躍動と、青葉を揺すって吹く強い風が響き合っている。

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芽柳の大河に沿うて句会かな  (石巻市飯野・高橋芳子)

【評】柳の芽が川風になびいて輝く。大河に沿って行けば句会の会場。事前に作った句にも自信がある。さあ少し急ごうか。仲間たちの笑顔が待っている。

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納豆屋に子が生まれけり柿若葉  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)

【評】若葉の中でも柿若葉は特に素晴らしい。その透き通るようなみずみずしさは、見る者を新鮮な幸福感で包み込んでくれる。誕生の喜びがあふれる。

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二の腕を見せてボート部夏近し  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

末黒野となり北上川の煌めけり  (石巻市雄勝町・末永くにゑ)

満開の花の重さや川細し  (仙台市青葉区・狩野好子)

犇めきて出航を待つ花筏  (石巻市蛇田・石の森市朗)

陽炎がエアポケットとなる真昼  (東松島市矢本・紺野透光)

臥竜梅咲き継ぐ庫裡の鬼瓦  (石巻市相野谷・山崎正子)

元気ですかメールが届く名残雪  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

鉄筆の採譜の音や昭和の日  (大崎市松山・佐々木博子)

たんぽぽに小さな靴の来て屈む  (石巻市小船越・芳賀正利)

解体の進む仮設や四月尽  (東松島市矢本・雫石昭一)

すかんぽや川の向うの遠き町  (石巻市中里・川下光子)

母の日や今宵も母の仕舞風呂  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

母の忌の長き読経や花の冷  (石巻市中里・鈴木登喜子)

花莚より声かけられる故郷かな  (石巻市向陽町・佐藤真理子)

平成を桜隠しで閉じるかな  (石巻市駅前北通り・津田調作)

軽やかに走る自転車風青し  (角田市角田・佐藤ひろ子)