コラム:ノートルダム大聖堂

 去る4月15日の夕刻、パリにあるノートルダム大聖堂で大模な火災が発生。歴史的建築物である大聖堂が炎上、尖塔とその周辺の屋根が崩落。わが国でも映像とともに大きく報じられました。パリを訪れるたびに見学し、その偉容さに心を奪われた私にとっても残念なニュースです。

 Notre Dame とつづるこの寺院は「ノートルダム」という呼称でおなじみですが、このフランス語は「われらの貴婦人」という意味。英米のメディアでは時折"Our Lady"と英訳されています。これは聖母マリアのことで、ノートルダムは聖母マリアにささげられた教会堂なのです。

 さて、notre は「われらの」、dame は「(貴)婦人」を表すフランス語ですが、notre の代わりに ma(私の)を付けて madame とすると「奥さま・夫人」。これが英語に入ってきて madam(マダム)という言葉になったしだいです。

 英語で男性に対する敬称は"Sir"(サー)ですね。軍隊などで上官に"Yes, Sir!"と応える場面が映画などで見受けられます。一方、女性に対する丁寧な呼び掛けは Madam。しばしば ma'am(マム)と短縮されます。店員などが女性客に次のように挨拶。"Can I help you, ma'am?"「いらっしゃいませ、奥さま」。

 最後に、ノートルダム大聖堂があるパリ中心部を流れるセーヌ川の中州「シテ島」(Île de la Cité)について。このフランス語 cité から「市」を意味する現代英語 city(シティ)、さらには「市民」citizen(シティズン)が由来したとされています。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)