コラム:高齢者

 先月の東京・池袋での事故も含めて「高齢者の運転」が大きな社会問題になっています。私も「前期高齢者」であり、毎日祈るような気持ちで車を運転。今まで事故を起こしたことはありませんが、いつ免許を返納すべきかなど、考え込むようになりました。

 さて、この「高齢者」という言葉。「コウレイシャ」と発音するといささか堅い感じが否めません。ほかに適切な言葉がないこともありますが。

 ひるがえって、英語ではどう表すでしょう。old man / woman では「老人/老女」のような感じになります。

 ご存知、ヘミングウェイの名作「老人と海」の原題は"The Old Man and the Sea"。

 むしろ、old people あるいは old の婉曲(えんきょく)表現に、elderly(エルダリー)という語があります。これを用いて elderly people とすれば「年配の」「お年を召した」といった日本語に近くなります。

 また、最近流行の「シルバー世代」(silver generation)はどうかというと、日本国内で用いる限りはいいのですが、英語圏の人には通じません。silver には「高齢」という意味がないからです。

 もう一つ、「シニア」(senior)。これは使えますが、どちらかというと「年上の」という形容詞の用法になります。

 いつも感心するのは senior citizen という表現です。直訳すると「年長の市民」ですが、いくら年をとっても「市民」に変わりはないというお年寄りのプライドを保つような素晴らしい言葉だと思います。さながら「長老」にあたるでしょうか。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)