コラム:パルムドール

 「アラン・ドロンさんに名誉賞」(カンヌ映画祭)、5月20日の河北新報の記事です。映画史への功績をたたえる「名誉パルムドール」受賞とあります。生真面目な表情で賞を手にした白髪のドロンの写真。83歳。あの「太陽がいっぱい」(伊・仏合作映画 1960年)から60年近い年月が流れたことをあらためて感じさせられました。

 さて「パルムドール」と言えば昨年、是枝裕和監督が「万引き家族」で受賞し、話題を呼びました。喜びとともに披露されたトロフィー「黄金のシュロ」の映像が記憶に新しいところです。

 「パルムドール(Palme d'Or)」はフランス語。英語で表せば palm of Gold。

 or は「金」です。palme は、厳密には日本原産のシュロではなく、ヤシ科の「ナツメヤシ」とのこと。西洋では勝利・栄誉の象徴とされ、カンヌ市章にも使われています。その実は「デーツ」と呼ばれ、北アフリカなどの主要な食品です。

 英語で「シュロ」「ヤシ」のことを palm(tree)と言いますが、ルーツを探ると、ラテン語で「手のひら」を意味する palman、古フランス語の paume に由来します。

 現代英語で「手のひら」は palm。なるほど、ヤシの葉は人間の手を開いた形に似ていますね。たとえば、英語で「手相見」は a palm reader と言います。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)