【水戸一志 選/評】
◎童謡「夕焼小焼」が作られたのは、今から100年近く前の1923年。その年に関東大震災が起きた。歌の抒情に悲しい影はないが、時の起伏を経て、人それぞれに懐古や鎮魂の涙を誘う。上五は津波被災地の情景に重ねるフィクションとして鑑賞した。
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◎ 訃の報(しら)せ海に夕焼け野に小焼け (多賀城市八幡・佐藤久嘉)
目をこらし入選を追う無い名前 (石巻市蛇田・鈴木醉蝶)
初々しい胸の名札がレジを打つ (東松島市矢本・阿部房枝)
東西でカジノに群れる亡者たち (石巻市築山・飯田駄骨)
関税を武器にトランプ腕まくり (石巻市不動町・新沼勝夫)
オルレ旅10キロコースに音をあげる (石巻市桃生町・高橋冠)
出ぬはずの電話つながる梅雨の闇 (石巻市桃生町・北のから猫)
失って初めて気づく旧友(とも)の恩 (石巻市井内・高橋健治)