コラム:移民の国(中) 人種のモザイク

 以前から気になっていたことがあります。「アメリカ合衆国」の「合衆」です。英語名は" United States of America "ですね。States は「州」という意味ですから United States は「合州」としなければ理屈に合わない。それを「合衆」と訳しているのはなぜか...。

 ところが、昨今のアメリカの動向を見ると、むしろ「合衆」つまり「人々の集合」とするのが妥当ではないかと思えてきたのです。

 2010年の連邦国勢調査によればアメリカ人の出自(出身国)は、イギリスやドイツなどのアングロサクソン系が約36%、他のヨーロッパ系が26%、メキシコなどのヒスパニック系が18%、アフリカ系が14%となっています。

 前回紹介した映画「ゴッドファーザー( The Godfather )」の主人公ビィトー・コルリオーニは、イタリアからの移民。J・F・ケネディの祖先がアイルランド出身というのは、よく知られています。そして、トランプ大統領はドイツ移民の家系です。

 また、おなじみのミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」( West Side Story )は、ポーランド系アメリカ人のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団との抗争が、トニーとマリアの悲劇を生む物語です。

 このように、アメリカはさまざまな背景を持つ人々が一つの国を構成しているのです。

 ただし、「人種のるつぼ」( Melting Pot )ではなく、それぞれが自分たちのアイデンティティを主張していることから、「人種のモザイク」( mosaic )あるいは「サラダボウル」( salad bowl )という表現が今は一般的です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)