コラム:寄り添う

 22日、天皇陛下が内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」が皇居で行われ、陛下は玉座からこう述べられました。

国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います

 一連の儀式は即座に世界中のメディアによって報じられ、お言葉は各国語に翻訳されましたが、本コラムとしては「地球語」としての英語にこだわってみたいと思います。特に「国民に寄り添いながら」という部分がどう英訳されているか、私も興味がありました。

 「寄り添う」という言葉は、阪神淡路および東日本大震災以来、ほぼ日常的に用いられています。この日本語には「何気なくそばにいてそっと支えてあげる」といった温かい控え目な感じがありますね。それだけに英訳するのが難しい。

 米国のCNN放送および英国を代表する「ガーディアン」紙を例に紹介します。「国民に寄り添いながら」の訳は一様にこうでした。

 " turning my thoughts to the people and standing by them "

 " turning my thoughts to the people "は「思いを人々に向け」、そして" standing by them "は「(人々の)そばにいて」。映画「Stand by Me」(1986年、米国)でおなじみですね。" Stand by me "は「心の支えになってくれ」というオシャレな言葉。

 英語が達者な陛下、そして雅子妃も " I'll stand by you."と心の中でつぶやかれたのかも...。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)