俳句(2/2掲載)

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【石母田星人 選】

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万両の実の一粒を拾ひけり  (石巻市丸井戸・水上孝子)

【評】花の少ない歳末。花屋を覗くと鮮やかな実をつけた植物が並んでいた。切り花としての千両が幅を利かせていたが、万両は松や葉牡丹などと一緒に寄せ植えされ、鉢植えの形で売られていた。掲句の万両も正月の縁起物として室内に置かれていた鉢物だろう。役目を終えたようにこぼれ落ちた万両の一粒。それを手に和やかに過ぎた正月を振り返っている。味わいの深い平易な詠みぶりがイメージを膨らませる。

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川灯台直立不動冬怒濤  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

【評】厳しい季節ならではの光景を活写した一句。イメージに合わせて全て漢字で構成。「直立不動」の静と「冬怒濤」のダイナミックな動の対比が焦点だ。「不動」と「怒濤」の脚韻にも注目したい。

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冴返るノートパソコン点滅す  (東松島市矢本・紺野透光)

【評】暖かさが数日続いたと思ったら、また寒さがぶり返してきた。その感覚を機器の点滅で表現した。心に染み込む寒のイメージは、やはり青色の点滅か。

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大漁旗はためき春は沖より来  (石巻市相野谷・山崎正子)

【評】あさって4日は立春。寒さはまだ厳しいが、春は確実に近づいている。この地の春は沖からやって来ると断定する作者。大漁旗は頼もしい存在だ。

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松過ぎの野にあはあはと立つけむり  (石巻市桃生町・西條弘子)

古代より巨巌を崇め初詣  (石巻市小船越・芳賀正利)

初釜や加賀友禅の女子高生  (石巻市南中里・中山文)

白足袋の座り直して小鉤五個  (石巻市中里・川下光子)

盃に映る多幸や屠蘇祝ふ  (東松島市新東名・板垣美樹)

がつがつと蜜柑剥く子と年送る  (石巻市蛇田・石の森市朗)

凍蝶や泪ひとふき友送る  (東松島市矢本・雫石昭一)

薄氷のするり剥がるる墓石かな  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

庇から少しかしらを寒雀  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

初日の出小さき雲は山に消ゆ  (石巻市北上町・佐藤嘉信)

読み聞かす寧日われのお年玉  (石巻市開北・星ゆき)

白鳥の一途にあさる田圃かな  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

チューリップの赤鮮やかに部屋明し  (仙台市青葉区・狩野好子)

春待つや細波やさし凪の浜  (石巻市門脇・佐々木一夫)

雪ばんば下校の子等の帽子にも  (石巻市中里・鈴木登喜子)

南天と山茶花競う冬の庭  (石巻市桃生町・高橋冠)