「石巻かほく」短歌の2019年度最優秀賞と優秀賞が決まった。最優秀賞は短歌が石巻市向陽町の後藤信子さん(82)が選出された。優秀賞は同市赤井の佐々木スヅ子さん(79)と多賀城市八幡の佐藤久嘉さん(73)が選ばれた。選者の佐藤成晃氏が選考した。
■ 受賞者の声/後藤さん「感激から誕生」 賞とは無縁の生活をしてきたので驚きました。大変光栄です。
1973(昭和48)年に蛇田短歌会に入り、今は世話人を務めています。短歌は感激がないと生まれません。目にする風景を細かく見るようにしています。ものの見方は深くなります。
短歌会の活動をする蛇田公民館が先日、新しくなりました。環境は快適です。これからも短歌と向き合っていきます。
■ 選者から/佐藤さん「身辺見つめる」
最優秀の後藤信子さんの作品は<六十年嫁かしての記念日 小春日をディーの車に乗り込む夫は>。長寿社会の現実の厳しい一面を作者の心情を伏せて詠(うた)った佳作。優秀賞には佐々木スヅ子さんの<年末の準備と言えばお年玉≪一葉≫抜いたり≪諭吉≫入れたり>、佐藤久嘉さんの<鯖缶(さばかん)を開ければあの頃が甦(よみがえ)るこの美味しさのおかしくかなし>を選んだ。
3首とも趣きは異なるが、甲乙つけがたい佳作だった。自分の身辺を深く見つめることが第一。まずは「老い」であり「家族との関わり」であり、「人生を破壊されそうになった事件」の思い出だ。
その表現にどのように心を砕いたか、どの言葉でつづったかがこのような結果になったのだと思う。精進とか努力という営みの一つとしての作歌だろう。
人生経験の豊富な方の作品はそれなりの心情の豊かさが伝わるが、さまざま年代の作品も拝読したい。