コラム:パスポートとビザ

 イタリア北部で新型コロナウイルスによる感染が急速に広がり、3月13日の時点で死者が1200人を超えたとのこと。

 ミラノをはじめ、ヴェネツィア、フィレンツェを観光で訪れた方も多いことでしょう。15年ほど前、私もこれらの都市を列車で巡りました。ヨーロッパ31カ国の鉄道を乗り放題できる「ユーレイル・グローバル・パス」( Eurail Global Pass )という周遊券で、時刻表を見ながらの一人旅でした。

 さて、海外旅行といえばパスポート。うっかり忘れて成田から石巻の自宅まで取りに戻った人がいるとか。しかし、いったんフランスなどEU圏の入国審査を通ってしまえば、あとはスルスル。EU加盟22カ国と欧州自由貿易連合(EFTA)加盟4カ国の計26カ国は、出入国審査を廃止しているからです。

 パスポート( passport )は英語ですが、pass + port と分解できます。pass は「歩く・通る」を意味するラテン語 passare が語源。port はご存知「港」。つまり「パスポート」は海外へ「歩き」出すための証ということです。

 そして「ビザ」( visa )。ラテン語の videre(見る)に由来します。video(ビデオ)、visual(ビジュアル)などと同じ系列です。日本語で「査証」と言いますが、渡航先の国が入国を許可するために発行する「入国許可証」のようなもの。ただし、ビザはすべての国で必要ではなく、例えば「観光ビザ」はインド、サウジアラビア、エジプトなどへの旅行には不可欠です。

 パスポートと言えば、トム・ハンクスが主演した映画「ターミナル」( The Terminal、2004年・アメリカ)を思い出してしまいます。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)