コラム:ステイホーム

 「新型コロナウイルス」(COVID-19)の渦中にあって、" Stay Home "(ステイ・ホーム)が合言葉になっています。英米の新聞などでは stay-at-home とも。home はお馴染みの英語ですが、同じく「家」を意味する house(ハウス)との違いを知っておきましょう。

 基本的な違いとして、home は自分が住む場所、家庭、故郷、さらには心の拠り所のようなものを指します。一方の house は、主として「一戸建ての家」を意味します。たとえば、" I bought a house. It's my home. "(家を買った。我が家だ)...ある映画での、長年アパート暮らしだった若者の台詞です。

 Be it ever so humble, there's no place like home.
(たとえどんなに見すぼらしくとも、我が家にまさるところはない)

 これは「埴生の宿」(原曲:イングランド民謡 Home, Sweet Home )の一節。「埴生の宿」とは「赤土を塗って作った粗末な家」を意味します。かつて、ある結婚式でのスピーチで私はこの歌を引き合いに出し「どんなところに住もうとも、お二人がいるところ、そこが home なのです」と言いました。ところが帰宅してから後悔の念に。赤土の家に住めということか...。

 Stay Home は「外に出ないで家にいなさい」という意味ですが、この場合の home は「家に」という stay を修飾する副詞の働きをしています。Come home.(帰宅する)の場合も同じ。一方、" Home, Sweet Home "の home は「家」を表す名詞です。ここがややこしいところです。

 親友のS君は大の Oldies(オールディーズ)ファンで、「パット・ブーン( Pat Boone )の代表曲に" I'll Be Home "というのがある」と教えてくれました。「もうすぐ帰るよ」と訳せますが、間違って" I'll Be a Home "とすると「僕は家になるよ」といったシュールな意味になりかねません。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)