俳句(6/7掲載)

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【石母田星人 選】

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畦に咲く花を目当に田掻牛  (石巻市蛇田・高橋牛歩)

【評】田植えの準備。今は機械で行うが昔は牛馬が主役だった。馬鍬を牛にひかせての代かきの作業だ。この句には、現在と牛のいた過去の二重の時が流れている。二つをつないでいるのは「畦に咲く花」。この花が現在と過去のトンネルの役目を担っている。同じ作者の投稿句には<牛哀れ尿を垂れたれ代を掻く>もある。こちらは回想に浸った句だが、かけがえのない思い出なのだろう。残しておきたい風景だ。

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己が身の重さに耐えて白牡丹  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

【評】大切に育てている白牡丹だろう。植え替えや枝切り、施肥や水やりなど手塩にかけた結果の大輪。ボリュームがあり少々頭を下げる。でも気品や風格は失わない。「耐え」に子に注ぐような愛情を感じる。

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円く掃く自走掃除機夕薄暑  (石巻市相野谷・山崎正子)

【評】自走掃除機の完璧な仕事ぶりを眺めている。「四角な座敷を丸く掃く」は手抜きの意だが、ここは丁寧の意味。少し疲れた感じの季語の選択がうまい。

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ブルーインパルス轟音近し菊根分  (石巻市中里・鈴木登喜子)

【評】季語「菊根分」とは、古株の間から萌え出た芽を1本ずつ親根から離して植え替えること。轟音と菊根分の取り合わせが意表を突いていて新鮮だ。

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菜の花や空母停泊する港  (石巻市蛇田・石の森市朗)

翁から牡丹伐つて持たさるる  (石巻市小船越・芳賀正利)

藤の香に触れて毎朝氏神へ  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

ポロロンと三段跳びの莢豌豆  (石巻市丸井戸・水上孝子)

麦飯やするめは箸で押さえ焼く  (東松島市矢本・紺野透光)

みどり子の鼻の低さよ虹の橋  (東松島市新東名・板垣美樹)

著莪の花斜面に群れて時止める  (仙台市青葉区・狩野好子)

二つ三つ水田に雲や今朝の夏  (東松島市矢本・雫石昭一)

一掻きの伸びゆく艇や風光る  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

時の日や静かに回る花時計  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

お河童の口一文字花茨  (石巻市中里・川下光子)

肩寄せることなき今年桜路  (石巻市開北・星ゆき)

春潮や星満天に漁舟  (石巻市門脇・佐々木一夫)

山桜裾をかすみに化粧させ  (東松島市矢本・菅原れい子)

夏めくや分散登校に弾む児ら  (石巻市南中里・中山文)

夕焼けの真っ只中を燕舞ふ  (石巻市桃生町・高橋冠)