コラム:2人の女性(上) 米国大統領選

 安倍首相の突然の辞任で慌ただしい国内の情勢ですが、海の向こうのアメリカでは4年に一度の「政治ショー」がますます熱気を帯びています。11月の米大統領選に向けた与野党の全国大会が相次いで開催。8月17日に民主党が口火を切りました。コロナ禍によって、史上初めての「バーチャル党大会」。一方、共和党全国大会は同月24~27日、ノースカロライナ州シャーロットで小規模なイベントと、各地からのオン・ラインによる参加で実施されました。

 このところ海外メディア、特にCNNやBBCのTVに夢中になっています。Trump vs. Biden はもちろんですが、これまでにない図式に興味津々なのです。Trump陣営は応援演説に前国連大使 Nikki Haley(ニッキー・ヘイリー)を登場させました。それに対して Biden陣営は副大統領候補に Kamala Harris(カマラ・ハリス)上院議員を選出。

 注目すべきは、この2人の女性の出自です。ヘイリー前国連大使はインド・パンジャブ州出身でインド系アメリカ人、ハリス議員はジャマイカ出身の父とタミル系インド人を母に持つ移民2世。

 ヘイリーは2011年、サウスカロライナ州知事に当選。同州史上初の女性で、人種上ではマイノリティ出身の知事として全米の注目を浴びた人です。CNNで彼女の演説を聴きました。

 " It's now fashionable to say that America is racist. That is a lie. "

 「アメリカは人種差別の国だというのが流行(はやり)言葉になっていますが、それはウソです」と言い放ち、その主張には首をかしげざるを得ません。けれども、その口調は早口にならず冷静さを保ち、どちらかというと British English(英国式英語)ですが、極めて聞きやすいスピーチでした。「国際語としての英語」のお手本と言えましょう。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)