コラム:橋

 旧北上川に架かる新内海橋が完成しました。まさに震災からの復興の象徴。石巻の未来、明日に向けての橋。市民の一人としてうれしい限りです。

 旧内海橋はさまざまな思い出に満ちています。特に小学生の頃、夜、友達のお父さんに連れられて橋のたもとの岡田劇場(「オガダザ」として親しまれた旧岡田座)で、「月光仮面」や片岡千恵蔵主演の「多羅尾伴内・七つの顔の男だぜ」などを見たことは忘れられません。

 英語で「橋」は bridge ですが、「丸太」を意味する古英語 brycg が語源とのこと。また、ドイツ語では Brücke(ブリュッケ)と言います。中高校生のころ「テアトル東宝」で見た映画「橋」( Die Brücke、1959年、西ドイツ)は衝撃的でした。「戦場にかける橋」( The Bridge on The River Kwai、1957年、英・米合作)にも強烈な印象があります。

 地中海沿岸のラテン語圏では全く違う言葉になり、フランス語では pont(ポン)、スペイン語では puente(プエンテ)、イタリア語では ponte(ポンテ)。フィレンツェの中心部を流れるアルノ川に架かるベッキオ橋( Ponte Vecchio )は観光名所です。

 また、橋については特筆すべき言葉があります。「愛する日本と祖国アメリカの架け橋になりたい」...東日本大震災の津波の犠牲になったアメリカ人ALT(外国語指導助手)テイラー・アンダーソンさんが心から願っていたことです。

 悲しみに打ちひしがれたご両親とご家族。それを乗り越え、テイラーさんの遺志を受け継ごうと「テイラー・アンダーソン記念基金」( Taylor Anderson Memorial Fund)を立ち上げました。学校に「テイラー文庫」を寄贈しているほか、先生の故郷ヴァージニア州と石巻の高校生が夏に交互にホームステイを行うなど多彩な活動を展開しています。

テイラー・アンダーソン記念基金 http://tamf.jp/

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)