コラム:通訳

 菅新首相が去る9月20日夜、オーストラリアのモリソン首相およびトランプ米大統領を皮切りに、これまで中国など主要国首脳と相次いで電話会談。さらには25日に事前収録した動画を流す形式で国連総会で演説を行い、「菅外交」のスタートを切りました。

 あるTVの報道番組によれば、菅首相は英語が苦手とのことだが、政治家が国際的な舞台で活躍する場合に語学力は必須の条件ではない、という意見もありました。事実、歴代の首相の多くは語学に堪能でなくても各国の首脳と友好関係を上手に結んでいます。もっとも、たとえばサミットなどでの雑談( small talk )では、日常会話くらいはできた方がよいかもしれませんが。

 ところで、大事な外交の場で活躍するのが通訳です。当然ながら、一国を代表する首脳の発する言葉を正確に訳し、相手に伝えるという「究極の職人芸」をやってのける、まさにプロ中のプロ。英語では interpreter(インタープリター)と言います。国連などのブースで、各国語を瞬時に置きかえる「同時通訳者」は通常、simultaneous interpreter と呼ばれます。

 また、通訳のことを translator(トランスレイター)と表すこともあると聞きました。ただ、動詞形は translate(翻訳する)ですから、translator は「活字の通訳」つまり「翻訳家」を指すと言えるでしょう。

 筆者は大学生時代にはアルバイトとして、また現在も通訳らしきことをしていますが、大変な仕事であり、まさにヘトヘトになります。

 そう言えば、burn the candle at both ends というイディオムがあります。「ろうそくの両端を燃やす」→「無理をして精力を使い果たす」ということですが、「ヘトヘト」という言葉の通訳および翻訳の一案として使える表現かもしれませんね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)