俳句(11/8掲載)

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【石母田星人 選】

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山里ははにかむやうに薄紅葉   東松島市矢本/菅原れい子

【評】薄紅葉とは十分に色づく前のはしりの紅葉。そんな薄紅葉の本質をとらえようと、感情移入をして得られた言葉が中七の「はにかむ」。この言葉は人の様子や態度を表す際に用いられる。だが、この句では眼前に広がる薄紅葉の素晴らしさを表すのに使った。華やかに色づく直前に見せる静かな趣。まさにうってつけ。既成の表現から抜け出た一句になった。

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秋の声津波を語る手話の指   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】「秋の声」は澄んだ秋に聞こえてくる物音。自然の音や人の声など具体的な音ばかりでなく、心に響いてくる秋の気配もいう。再開された語り部活動の光景だろう。震災遺構などで語り部さんの手話が語る津波。心に重く響くこの手話も秋の声のひとつだ。

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浜茄子を一輪ゆらし今朝の冬   石巻市北上町/佐藤嘉信

【評】季語「今朝の冬」は立冬の朝のことをいう。咲き残った浜茄子が揺れて寂しげな空間だが、季語の効果できりっと身が引き締まり改まった気分になる。

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よく笑ふ赤子健やか小六月   石巻市小船越/芳賀正利

【評】「小六月」は陰暦十月の異称。立冬すぎから真冬前の暖かな頃合いをいう。よく晴れて春のように暖かい日和には赤ん坊の笑顔がよく似合う。

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熱気球の色も加はる初紅葉   東松島市新東名/板垣美樹

トランペット遠く流れて鰯雲   東松島市矢本/雫石昭一

残菊や千の佛の石となる   東松島市矢本/紺野透光

師の墓を訪へば俄に鵙の声   石巻市桃生町/西條弘子

秋天や三輪田陶器の深き藍   石巻市南中里/中山文

松手入はらりと池に浮かびけり   仙台市青葉区/狩野好子

ランナーの脚に絡まる秋の風   石巻市蛇田/石の森市朗

橡餅屋のれんを語る女将かな   石巻市丸井戸/水上孝子

曼珠沙華籠るに楽もありにけり   石巻市中里/川下光子

太すぎる母の指環や流れ星   石巻市開北/星ゆき

背の丈比べし柱秋思かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

これ以上大きな鍋なし芋煮会   石巻市吉野町/伊藤春夫

スイッチョと鳴いてすがりぬ膝の上   石巻市門脇/佐々木一夫

刈ッ切餅供へ稲刈了りけり   石巻市蛇田/高橋牛歩

紅葉晴守護神在す階二百   石巻市中里/上野空

もみぢ葉のひと葉流るる小川かな   石巻市三ツ股/浮津文好