コラム:Rust Belt(ラスト・ベルト)

 アメリカ大統領選、両陣営とも最後まで熾烈な戦いを演じました。その舞台となったのが特に激戦州と呼ばれるフロリダ(Florida)、ノース・カロライナ(North Carolina)、そしてペンシルベニア(Pennsylvania)。

 私が特に関心を抱いたのがペンシルベニアです。1950年代、小学校の授業でアメリカ重工業の中心地として学んだのがピッツバーグ(Pittsburg)。ペンシルベニア第2の都市であることは後から知りました。

 また、40年ほど前に見た映画「ディア・ハンター」(The Deer Hunter / 1978年、アメリカ)の衝撃は今でも忘れられません。舞台はアパラチア山脈の麓(ふもと)、ペンシルベニア州ヤングスタウンという小さな町。燃えさかる溶鉱炉や重機の轟音が響く製鉄所で、ススだらけになって懸命に働く若者たちのシーンから始まります。

 この鉄鋼業の繁栄で知られていた地域が1970年代以降、世界的な経済状況の変化により衰退の途に。イリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオなどの諸州と共に、その廃れた工場や街の様子から「ラスト・ベルト」(Rust Belt / 錆びついた地帯:rust = 錆)と呼ばれるようになりました。悲しいことです。

 さて、ピッツバーグという地名の由来ですが、18世紀半ばのフレンチ・インディアン戦争の際、イギリスの貴族で政治家のウィリアム・ピット(William Pitt、1708~78年)にちなんで付けられたもの。また、-burg はドイツ語の「城砦」から。

 ペンシルベニアは 、植民地の創建者ウィリアム・ペン(William Penn)の Penn とラテン語で「森」を意味する sylva(シルバ)を組み合わせた「ペンの森」に由来します。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)