コラム:ユーチューブ

 「大津君、いいものを見せよう」

 50年ほど前、大学の先輩Aさんが自室の書棚から取り出したのは薄いプラスチック・ケースに入った小さな「円盤」。「LPレコードより便利で、音質も格段いいよ」

 これが私とCD( compact disc )の出合いでした。折しもコンピュータ時代の幕開け。このディスクは、レコードに代わる音源として永遠に続くように思われました。

 ところが、最近、若い世代のあいだで「CD離れ」が進んでいるとの報道に接し、いささか驚いています。実際どうなのかと、親しい大学生たちに尋ねてみたところ、次のような言葉が返ってきました。

 「『簡単、便利、速い』が今どきの若者が求めるコンセプトと言えるかも」

 「お金をかけてCDを買わなくとも、ケータイがあれば、いつでもどこでも好きな音楽が楽しめるんですよ。たとえばユーチューブなんかで」

 ユーチューブ( YouTube )の存在は知っていたし、時折、アメリカの社会風刺番組の一つであるSNL( Saturday Night Live )などを楽しんできました。しかし、音楽となるとCDには及びません。

 でも、最近、あるギタリストの曲をユーチューブで聴いて「発見」しました。音色を楽しめるだけではなく、演奏する姿、指使い、表情がくまなく映し出されるのです。CDにないその「情報」はうれしいものでした。

 10代、20代の若者たちにとっては、アイドルの歌だけでなくパフォーマンス( performance )そのものが楽しめるわけですね、しかも無料で。

 CDが無くなることはないとしても、ネット時代の影響を少なからず受けつつあるのも事実です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)