コラム:丑がくる

 今日は大みそか。ネズミ( mouse )の年も終わりです。何の巡り合わせでしょうか、ネズミたち( mice )が「密」になって大暴れ。新型コロナ(COVID-19)が国内外に未曾有の被害をもたらし、いまだに収束の気配が見られません。先が見えない不安に脅えつつも、明日からの新しい年に望みを託すことにしましょう。

 2021年の干支は「丑」。このコロナとの戦いの世に現れるのは牛です。「牛はのろのろと歩く」で始まる高村光太郎の詩の一節に勇気づけられます。

ふみ出す足は必然だ
うわの空のことではない
是が非でも出さないではたまらない足を出す牛だ
出したら最後 牛は後へはかえらない

 さて、牛に関する英語を記してみましょう。

 総称は cattle(複数扱い)。1頭の牛を言う時、雄牛は bull(複数形 bulls )、ox(複数形 oxen)、雌牛は cow(複数形 cows )。cow を飼う男は cowboy。子牛は calf(複数形 calves )。

 このうち ox については、ある思い出があります。英国のオックスフォード( Oxford )を訪れた時のこと。街の入り口に「牛津」と記した案内板がありました。「何だろう?」と思い、手帳に記し帰国後調べたら、ちょっとびっくり。Oxford を中国語では「牛津」と表すのです。ford は「浅瀬、渡り場」という意味で、雄牛( ox )が渡れる浅瀬( ford )が地名の由来とのこと。

 「丑年」は Year of the Ox 。

 前述の光太郎の詩はこう続きます。

牛はがむしゃらではない
けれどかなりがむしゃらだ
邪魔なものは二本の角でひっかける

 新しき年、平穏な日々が戻るよう、ox のがむしゃらさに期待しましょう。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)