【石母田星人 選】
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雪晴の幼き巫女の笑顔かな 仙台市青葉区/狩野好子
【評】「幼き巫女」の表現から年末年始の繁忙期に雇われたアルバイトの巫女(みこ)さんと読んだ。巫女さんの装束は白衣と緋袴(ひばかま)。雪晴の中に輝いているが、とても寒いに違いない。だがこの巫女さんはそんなことには負けない。健やかな笑顔を振りまいている。
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蔵王峰遠くくっきり初景色 石巻市吉野町/伊藤春夫
【評】年があらたまると、きのうまでと何ら変わらない景色であってもどこか違う気がする。新たな年が始まったという晴れやかな心持ちが、見慣れた風景を清らかに塗り替えてくれるのだ。雪をかぶった遠くの蔵王が驚くほどくっきりと見えた。山を包む空も限りなく青く、淑気が満ちているのを感じた。作者はこの鮮明な蔵王を初景色として心に刻んだ。
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箒目の青海波なる大旦 石巻市丸井戸/水上孝子
【評】大旦(おおあした)は元旦の異称。初詣での光景だろうか。砂の敷かれている場所に、ほうきで描かれた青海波の形。そのうねりは清浄な感覚を思い出させてくれる。
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福寿草至福の日和たまはれり 東松島市矢本/紺野透光
【評】大きなつぼみが割れて、黄色い花が開くと、辺り一面がぬくもりに包まれる。そんな福寿草のある明るい空間を「至福の日和」と巧みに表現した。
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神杉の梢を照らす初明り 石巻市小船越/芳賀正利
みしみしと牡蠣棚つつく寒の月 多賀城市八幡/佐藤久嘉
初凪や水平線へ向ふ船 東松島市矢本/雫石昭一
天と地の私語雪吊りの縄に聞く 石巻市相野谷/山崎正子
風見鶏降誕祭の沖を見る 石巻市桃生町/西條弘子
年明けるかたへの妻の寝言きき 石巻市蛇田/石の森市朗
溶岩の色といふべき初日影 石巻市駅前北通り/小野正雄
受刑者のつくるマスクや夕茜 東松島市新東名/板垣美樹
コロナてふ重荷背負て去年今年 石巻市広渕/鹿野勝幸
初日の出まぶしかりけり祝ひ膳 石巻市門脇/佐々木一夫
古蔵に火影漏るるや十二月 石巻市中里/川下光子
暮初めて山茶花の白ほのあかり 石巻市桃生町/佐々木以功子
ひとり夜の炬燵も人を恋しがり 東松島市矢本/菅原れい子
松過や焼おにぎりの味噌匂ふ 石巻市蛇田/高橋牛歩
寒風に立ちし振袖立ち袴 石巻市南中里/中山文
寒卵母はいつでも立ち仕事 石巻市流留/大槻洋子