俳句(1/24掲載)

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【石母田星人 選】

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雪晴の幼き巫女の笑顔かな   仙台市青葉区/狩野好子

【評】「幼き巫女」の表現から年末年始の繁忙期に雇われたアルバイトの巫女(みこ)さんと読んだ。巫女さんの装束は白衣と緋袴(ひばかま)。雪晴の中に輝いているが、とても寒いに違いない。だがこの巫女さんはそんなことには負けない。健やかな笑顔を振りまいている。

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蔵王峰遠くくっきり初景色   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】年があらたまると、きのうまでと何ら変わらない景色であってもどこか違う気がする。新たな年が始まったという晴れやかな心持ちが、見慣れた風景を清らかに塗り替えてくれるのだ。雪をかぶった遠くの蔵王が驚くほどくっきりと見えた。山を包む空も限りなく青く、淑気が満ちているのを感じた。作者はこの鮮明な蔵王を初景色として心に刻んだ。

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箒目の青海波なる大旦   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】大旦(おおあした)は元旦の異称。初詣での光景だろうか。砂の敷かれている場所に、ほうきで描かれた青海波の形。そのうねりは清浄な感覚を思い出させてくれる。

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福寿草至福の日和たまはれり   東松島市矢本/紺野透光

【評】大きなつぼみが割れて、黄色い花が開くと、辺り一面がぬくもりに包まれる。そんな福寿草のある明るい空間を「至福の日和」と巧みに表現した。

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神杉の梢を照らす初明り   石巻市小船越/芳賀正利

みしみしと牡蠣棚つつく寒の月   多賀城市八幡/佐藤久嘉

初凪や水平線へ向ふ船   東松島市矢本/雫石昭一

天と地の私語雪吊りの縄に聞く   石巻市相野谷/山崎正子

風見鶏降誕祭の沖を見る   石巻市桃生町/西條弘子

年明けるかたへの妻の寝言きき   石巻市蛇田/石の森市朗

溶岩の色といふべき初日影   石巻市駅前北通り/小野正雄

受刑者のつくるマスクや夕茜   東松島市新東名/板垣美樹

コロナてふ重荷背負て去年今年   石巻市広渕/鹿野勝幸

初日の出まぶしかりけり祝ひ膳   石巻市門脇/佐々木一夫

古蔵に火影漏るるや十二月   石巻市中里/川下光子

暮初めて山茶花の白ほのあかり   石巻市桃生町/佐々木以功子

ひとり夜の炬燵も人を恋しがり   東松島市矢本/菅原れい子

松過や焼おにぎりの味噌匂ふ   石巻市蛇田/高橋牛歩

寒風に立ちし振袖立ち袴   石巻市南中里/中山文

寒卵母はいつでも立ち仕事   石巻市流留/大槻洋子