コラム:「運命などない!」

 ステイホームの毎日、仲間と会って一杯飲みながら図っていた気分転換もできず、つい「テレビ爺さん」に。映画好きの私です。放映される作品に加えて書棚に並んだDVDの数々。邦画に洋画、古今の名作の数々に、時のたつのも忘れるほど。

 このたび久しぶりで見たのが「アラビアのロレンス」( Lawrence of Arabia / 1962年、イギリス)。私にとって「トップ3」に入る作品です。巨匠デビッド・リーン監督による全編227分の大作(完全版 1988年)。学生時代に新宿の映画館の大画面で見たときの感激は忘れられません。茫漠たる砂漠を進む遊牧の民ベドウィンたち。ラクダの隊列はさながら大海をゆく小舟のようです。

 そして、後に名優となった新進気鋭の俳優たち...主役のピーター・オトゥ―ルに加えてオマー・シャリフ、アレック・ギネス、アンソニー・クインら。さらにはモーリス・ジャール作曲の荘厳な音楽。画面に魅せられているうちに、気がついたら4時間近くが過ぎ去っていました。

 映画の中で特に印象に残ったロレンスのセリフを二つ紹介します。

 一つは、灼熱の砂漠で隊列から落伍したベドウィンの一人を命がけで助けに戻り、隊に帰った時の一言。" Nothing is written."「(コーランには)何も書いていない」→「運命などないのだ」

 もう一つは「あなたは砂漠の何に魅せられている?」というアメリカの新聞記者の問いに対して、一言。" It's clean. "

 残された人生、ロケ地のヨルダンやモロッコなどの砂漠をこの目で見てみたい、そんな気持ちに駆られているのです。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)