コラム:ジェンダー

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長職をめぐって、森元総理の「女性蔑視発言」が国内外のメディアで報じられ、SNS上で拡散。多くの女性が声を上げるとともに、「性差別」が大きな社会問題になりました。今なお「男尊女卑」の風土から脱却できない日本の姿を国際社会にさらけだす結果となったことは、極めて残念です。

 誰もが知っているように、英語で「男性」は man、「女性」は woman と言いますが、woman は wo+man と分解できます。この wo はどのような意味か、この機会に英語辞典の最高峰オックスフォード英語辞典・第2版(Oxford English Dictionary)を改めて参照すると、wo の語源は wife「妻」と記されています。つまり、man のパートナーというわけですね。

 ところで、今回のタイトル「gender」ですが、これが「性」に関連する「ジェンダー」というカタカナ語として日本語に定着し始めたのは、かなり最近のこと。「性」というと、どうしても sex を連想しがちですが、セックスが生物学的な性差を表すのに対し、ジェンダーは社会的・文化的な性差のことです。

 与那嶺涼子氏によれば「ジェンダー」は「(男性および女性が)『こうあるべき』姿として、それぞれが所属する社会や文化から規定され、表現され、体現されます。それは、服装や髪形などのファッションから、言葉遣い、職業選択、家庭や職場での役割や責任の分担にも及び、更に、人々の心の在り方や、意識、考え方、コミュニケーションの仕方にまで反映されます」(内閣府ホームページ)。

 ちなみに、gender の語源は「起源、種類」などを意味するラテン語 genus です。gene(遺伝子)、gcnre(フランス語=ジャンル、分野)などの語源も同様です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)