コラム:レディ・ファースト(上)ー「男尊女卑」をめぐって

 終戦直後に生まれた私にとって「アメリカ」は身近にありました。矢本(現東松島市)にあった駐留軍の「松島キャンプ」(Camp Matsushima)からジープに乗ってやってくる軍人さんたちの姿を幼心(おさなごころ)に覚えています。

 そして、物心ついた小学生の頃、アメリカン・ポップスなどとともにラジオから流れてきたのは、聞きなれない言葉・英語です。特に忘れられないのが「レディ・ファースト」(原語では ladies, first と複数形になります)。「アメリカやイギリスではこれが紳士のマナーなんだ」と子ども心に感心したものです。

 女性を丁重に遇する英米のありようの一つは、聖書の記述にあるように思われます。

人(アダム)はあらゆる家畜、空の鳥、あらゆる野の獣(けもの)に名を付けた。しかし、自分にふさわしい助け手は見つけることができなかった。そこで、神である主は人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、そのあばら骨の一つを取り、そこを肉で閉ざされた。神である主は、人から取ったあばら骨で女を造り上げ、人のところへ連れてこられた。人は言った「これこそ、私の骨の骨、肉の肉。これを女と名付けよう。これは男から取られたからである」(旧約聖書・創世記2)

 「助け手」は helper と英訳されていますが、ヘブライ語の原典では「面と向かって存在する者」「支え合う者」と記されていると、石巻山城町教会の牧師さんから教わりました。

 そう言えば、教会での結婚式では新郎新婦が対等な立場で向かい合い、誓いを立てますね。西洋において「男女平等」が重んじられている根本は、ここにあるように思えます。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)