コラム:テラス

 今月1日、「マルホンまきあーとテラス」がオープンしました。震災から10年目の春、「市民会館」が装いも新たに蘇(よみがえ)ったのです。山の緑を背景に幾重にも連なる白き峰々...「白亜の殿堂」と呼ぶにふさわしい佇(たたず)まいに、しばし見惚(みとれ)れてしまいます。

 さて、名称の末尾の「テラス」についてちょっと考察してみました。英語の terrace に由来するこの言葉は今では日本語にすっかり定着していますが、その意味するところは何なのでしょうか。同じようなカタカナ語に「バルコニー」や「ベランダ」もありますが、それぞれの違いも分かりにくいですね。

 そこで、手元の英和辞典をめくると terrace は第一義に「台地」「段丘」を意味するとあります。さらには語源として「土を積んだところ」。どうやら「土」と関係がありそうな言葉です。

 建築上はどうかと調べてみると「建物外部で地面より一段高くなったスペースのこと」、そして「一戸建て住宅、または庭のあるマンションの1階に造られる」とあります。これに対して、バルコニー〔 balcony 〕、ベランダ〔 veranda(h)〕はマンションの2階以上に設けられる専用スペースとのこと。

 terrace 語源がラテン語の「土」「地」だとすれば、いくつかの語が浮かんできます。territory(テリトリー=領土)、terracotta(テラコッタ=素焼きの土器)。また、お馴染みの映画「E.T.」(1982年、米国)は Extra-Terrestrial「地球外生命体」の略です。

 ちなみに、バルコニーといえば、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の中で、ジュリエットが" O, Romeo, Romeo!"と呟(つぶや)く場面が有名ですね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)