コラム:ビューイング

 一昨年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)開催時、「パブリックビューイング」という言葉が一躍脚光を浴びました。全国各地に設けられた会場は連日満員に。人々の応援が盛り上がる映像がTVに流れ、日本中が沸き立ったのが昨日のことのように思い出されます。

 その感動を東京オリンピック・パラリンピックでもう一度と、東京都は大規模なパブリックビューイングの実施に向けて会場設営に取りかかりました。ところがその矢先、代々木公園でのライブサイトを中止し、新型コロナウイルスのワクチンの接種会場にするとの方向に舵を切り、各方面に混乱を招いています。

 「パブリックビューイング」は英語の public viewing に由来。スタジアムや公園の特設会場などに設置された大型スクリーンでスポーツの試合や音楽演奏などを生中継で見ることができるものを指します。

 日本語にしにくい言葉です。「パブリック」( public )は「公(おおやけ)の」ですが、「ビューイング」( viewing )が厄介。view は「景色」「視界」といった意味でおなじみですが、ここでは ~ing と動詞に用いられていますから。

 Oxford English Dictionary( O.E.D.=オックスフォード英語辞典)には次のように記されています。

Look at (something)more or less attentively.
(何かを)多少とも注意深く見る

これに相当する日本語は「(意識して、興味を持って)眺める」でしょうか。

 また、自分の意志を持って見るという意味で look(at)と watch がありますが、look が動かないものを見続けるのに対して、watch は動いているものをじっと見るという違いがあります。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)