コラム:エビデンス

 COVID-19の報道で感染症を研究している先生方がテレビに出演、それぞれ専門の立場から見解を示しています。その内容を十分に理解しないまま番組を視聴してきましたが、先生たちが口にするカタカナ語はなぜか記憶に残り、慣れ親しむようになっています。皆さんはどうでしょうか?

 たとえば「クラスター」や「エッセンシャル・ワーカー」など、そしてよく耳にするのが「エビデンス」です。この言葉は「証拠」や「根拠」を意味する英語の evidence で、けっこう難易度が高い単語に属します。私などは大学入試の受験勉強で必死に覚えたものです。

 ところで、この語が成り立ちの上で「ビデオ」と密接な関係があることをご存じでしょうか? 「成り立ち」とは語源のことです。evidence は 「e-」+「vidence」と分解できます。e- はラテン語の ex- で「外に」、vid は vision や video などの語のルーツで「見える」、evidence は「外に見えている」ということから、「証拠」などという日本語訳になるのです。

 そもそも「証(あかし)」は「明かす=暗いところを明るくする」(広辞苑第七版)から生まれ、「外に出して見えるようにする」ことに繋(つな)がっています。まさに「白日のもとにさらす」ということでしょう。

 「論より証拠」。あれこれ論じるよりも証拠を示すことで物事は明らかになる...学者先生のみならず私たちも「エビデンス」にこだわります。

 最後に、この「論より証拠」に相当する英語の諺(ことわざ)を紹介しましょう。

The proof of the pudding is in the eating.
食べることでプディングの味は証明できる
→プディングの味は食べてみないと分からない

 多くの人に災(わざわ)いをもたらすコロナ。確かなエビデンスに基づく一日も早い収束を祈らずにはいられません。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)