先週の金曜日、東北地方が梅雨明けしたと気象庁が発表。振り返れば、今年はこの時期の雨の苛酷な仕打ちに多くの人が泣きました。特に、今月3日に静岡県熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流は甚大な被害を及ぼし、今なお捜索活動が続いています。
私たち日本人にとって、雨は田畑を潤す恵みであると同時に急峻な地形を一気に流れ落ち洪水を引き起こすという、吉と凶の二面性をもっている存在です。一方、英語圏では雨( rain )にまつわる様々な表現があります。その一部を紹介しましょう。
まず、一風変わった表現があります。
It rains cats and dogs.
猫と犬の雨が降る
これは「雨が激しく降る」「土砂降りだ」という意味の慣用句。起源については諸説ありますが、「猫は雨を降らし、犬は風を起こす」という北欧の伝説に由来するという説が有力なようです。(『英米故事伝説辞典』冨山房)
さらに-。映画「マイ・フェアレディ」(アメリカ、1964年)の中に「スペインの雨」というシーンがあります。オードリー・ヘプバーン扮する下町生まれの花売り娘イライザの粗野な言葉遣いを矯正しようと、言語学者・ヒギンズ教授が彼女に課すのが次の文です。
Rain in Spain stays mainly in the plain.
スペインの雨は主に平野に降る
コックニーと呼ばれる下町言葉では[éi]を[ái]と発音するため、イライザは rain を「ライン」、Spain を「スパイン」、stays を「スタイズ」などと発音。しかし、涙ぐましい練習の末、ある夜更けに突然「レイン イン スペイン ステイズ メインリー イン ザ プレイン」と正しく発音し、教授を驚かせ、二人は共に喜び踊ります。
私の場合、これまで英語を学んできて、「雨」と言えば真っ先に以上の2つが浮かんでくるのです。
大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)