俳句(1/16掲載)

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【石母田星人 選】

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戦なき七十七年初御空   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】元日の空に向かって改めて誓うのは、戦争のない世界。戦後生まれが8割となった今、折に触れて戦争体験を詠んでくれる作者には頭が下がる。今年は「戦なき七十七年」。平和の尊さを再認識したい。

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再建の大鳥居より初日の出   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】日和山の大鳥居。昨年末、この新しい鳥居を詠んだ句が幾つか寄せられた。紹介はできなかったがどの句も、盛大なくぐり初めの光景に重ねて、再建の喜びやあるべきものが無かった寂しさを詠んでいた。この鳥居は心のよりどころなのだと改めて教わった。新たな鳥居になって初めての初日の出。荘厳な輝きに新年の始まりを実感した作者。あるべきものがあるという幸せと喜びをかみしめながら。

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綿虫や道に迷いて尋ね来し   東松島市矢本/雫石昭一

【評】青白く光りながら、緩やかに浮遊する綿虫。作者の差し出した指に一休み。その後またふわふわ。そんな綿虫との出合いを表現。映像が見えるようだ。

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チェンソーの音の明るき枯木山   石巻市桃生町/西條弘子

【評】落葉樹が全て葉を落とした枯木山。夏と違い山全体が開けっぴろげの状態。聞こえるのは伐採音。上句にも下五にもかかるような「明るき」が巧み。

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初御空交響曲の始まりぬ   仙台市青葉区/狩野好子

良き事の拾ひ読みして年新た   石巻市丸井戸/水上孝子

白鳥の声掛け合うて山越ゆる   石巻市相野谷/山崎正子

断崖の鷹海峡の風となる   石巻市蛇田/石の森市朗

元日や満艦飾の船溜り   石巻市蛇田/高橋牛歩

雪道に松毬ひとつ何処から   石巻市小船越/芳賀正利

カーブミラー冬夕焼を独り占め   石巻市小船越/三浦ときわ

福寿草津波に荒れし庭に咲き   石巻市三ツ股/浮津文好

時雨虹帰郷打診を断りて   石巻市流留/大槻洋子

洗顔の朝の動線冬ぬくし   石巻市中里/川下光子

同じ話ききに二世代聖菓かな   石巻市開北/星ゆき

討ち入りにやはり初雪月明り   多賀城市八幡/佐藤久嘉

冬うらら舟をこぎこぎ読書かな   石巻市門脇/佐々木一夫

この年も両手に余る落葉掃き   石巻市駅前北通り/津田調作

老いたとて心前むき年新た   東松島市あおい/大江和子

新雪の葉音かすかに八つ手花   石巻市丸井戸/佐々木あい子