俳句(2/27掲載)

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【石母田星人 選】

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一団の鳴き声猛し鳥雲に   仙台市青葉区/狩野好子

【評】北帰行が始まった。これから日を追うごとに帰って行く。名残を惜しむように旋回して北西の空に消える。「猛し」には長旅に挑む気構えが見える。

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春の雪堆肥の熱に戸惑へり   石巻市蛇田/高橋牛歩

【評】冷え込んだ朝などに堆肥から白い湯気が立ち昇っていることがある。湯気を舞う春雪。その光景は驚くほど明るい。戸惑いを覚えたのは作者なのだ。

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読初や邪馬台国を疑ひぬ   石巻市駅前北通り/小野正雄

【評】九州説や畿内説など所在地論争が続く邪馬台国。年明けに初めて読んだのが、邪馬台国がそもそもなかったとする一冊。今年も知的好奇心旺盛な作者。

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あの津波思ひださせる春の雪   石巻市蛇田/石の森市朗

日高見の海の色なり蕗の薹   石巻市相野谷/山崎正子

冬空をスノーボーダー裏返す   石巻市広渕/鹿野勝幸

スノーボード天地返して競ひをり   石巻市桃生町/西條弘子

初燕メール途中の手を置きて   東松島市矢本/雫石昭一

軽き音残し流るる春の水   石巻市小船越/芳賀正利

薄氷(うすらひ)に集まる空や少年期   石巻市駅前北通り/津田調作

ぐい呑に春を練り込む窯場かな   石巻市門脇/佐々木一夫

紅色の酒田舞妓の冬館   石巻市丸井戸/水上孝子

寒月や山の風車の無回転   石巻市新館/高橋豊

行き帰り巨樹に一礼日脚伸ぶ   石巻市元倉/小山英智

田の神に今年も祈り農始め   東松島市矢本/菅原れい子

ひざ寄せて家族で吹きし葛湯かな   石巻市流留/大槻洋子

寒風に十二単衣の芽のひかり   石巻市開北/星ゆき

ふりむけばぽとりと音す落椿   石巻市吉野町/伊藤春夫

筆走る立春大吉寺の門   東松島市矢本/川崎淑子

老いふたり今は小ぶりのおでん鍋   多賀城市八幡/佐藤久嘉

春菊の胡麻和へ好む男かな   石巻市中里/川下光子

白き田に餌を求めて寒鴉   東松島市矢本/奥田和衛

手のひらに受けし風花消えにけり   石巻市三ツ股/浮津文好

仕舞風呂湯をたっぷりと寒の月   石巻市中里/鈴木登喜子

防災のバッグお守り春愁   石巻市二子/北みなみ