石巻かほく「短歌」 2021年度最優秀賞に三條順子さん

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 2021年度の「石巻かほく」短歌欄の最優秀賞と優秀賞が決まった。最優秀賞は石巻市大門町の三條順子さん(74)、優秀賞は石巻市開北の星ゆきさん(70)と石巻市駅前北通りの庄司邦生さん(78)がそれぞれ選ばれた。選者の斉藤梢氏が選考した。

受賞者の声/三條さん「朝、言葉浮かぶ」
 今から5、6年前に独学で短歌を始めました。新聞やテレビから得る情報や暮らしの中で感じたことを日々ノートに書き留めており、朝起きた時に作品の言葉が浮かぶことが多いです。
 昨年4月に歌集を自費出版しました。初めて知る言葉を辞書で調べますが、日本語は奥が深いと思います。今後も投稿を続けるとともに、思いをエッセーで表すことにも挑戦してみたいです。

選者から/斉藤さん「被災者の心情を深く表現」
 最優秀賞は三條順子さんの昨年3月14日掲載の作品の<問いもせず語りもせずにただ眺む太平洋の同じ大きさ>。東日本大震災から十年という年月を語るように、この一首は在る。
 「ただ眺む」は、声にはならないさまざまな思いを伝えていて、海に真向い自らの今を見つめている作者の姿が見える。多くの震災歌を私は読んできたが、この歌は心情を深く表現していて心に残る。
 優秀賞は星ゆきさんの<もろ肌を晒すごときの短歌(うた)ノート今宵に終わり胸に抱きしむ>。作者にとって歌は生きている証であろう。詠むことは「晒す」ことでもあるという自覚。熱い思いが率直に表現されている。
 同じく優秀賞は庄司邦生さんの<わが名呼ぶ母の声なき十幾年されど聞きおりこえ無きこえを>。母への思いを詠む。聞こえるはずのない声を作者は心で聞く。歌は心を表現するものだと気づかせてくれる一首。