【水戸一志 選】
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財布から蛍の光流れてる 東松島市矢本/畑山講也
【評】情景の解釈に迷うが、そこはかとない物悲しさが漂うのは、卒業式を連想するからだろうか。確かに、3月は卒業、転勤などで物入りが続く。別離の感情と財布からお札が消えて行くむなしさは表裏一体。詩的な表現で世の現実を突く成功例といえる。
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庭先に舌を隠して雀くる 東松島市矢本/奥田和衛
北帰行コロナも連れて行ってくれ 石巻市水押/小山信吾
手を組んで値上げの風がピューピューと 石巻市渡波町/小林照子
ドッコイショ座るも立つも口癖に 石巻市のぞみ野/阿部佐代子
春の陽に心の重さ裏返す 石巻市あゆみ野/日野信吾
玉木丸おも舵切って迷い船 東松島市赤井/片岡シュウジー
ロシア国中身ソ連と変わりない 石巻市大街道/岩出幹夫