俳句(3/27掲載)

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【石母田星人 選】

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追悼のあかりにうるむ春の星   石巻市相野谷/山崎正子

【評】石巻市の旧大川小で初めて開かれた追悼行事「大川竹あかり」。竹灯籠にLEDの温かい明かりがともされた。祈りの空間を動詞「うるむ」が広げる。

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金継ぎの金の走れり春の月   石巻市中里/川下光子

【評】金継ぎの「景色」を眺めている作者。きっと自分で直した器なのだろう。金継ぎのおかげでさらに愛着が深まった。美しい器と春月が響き合っている。

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ほらほらと老いを励ます梅の花   石巻市駅前北通り/津田調作

【評】梅はおしゃべりだ。寒さの中けなげに咲いてその色と香りで「さあ春だよ」と語り掛けてくれる。梅は聞き上手でもある。特に老いの話は大好きだ。

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梅の香や日はきらきらと被災の地   石巻市蛇田/石の森市朗

蝌蚪の目や震災跡の水たまり   東松島市矢本/雫石昭一

多羅葉の日を返しゐる涅槃寺   石巻市桃生町/西條弘子

くろもじの切り口白し草の餅   仙台市青葉区/狩野好子

爆撃の音はいつ止むぼたん雪   石巻市流留/大槻洋子

この世界イマジンの声満つる春   石巻市駅前北通り/小野正雄

春熱く祖国守れとウクライナ   石巻市広渕/鹿野勝幸

水仙花太陽の子になりたくて   石巻市丸井戸/水上孝子

三月の捜索続き十一年   石巻市蛇田/高橋牛歩

三月の涙はいつも塩からい   多賀城市八幡/佐藤久嘉

空き部屋の二階北窓開きけり   石巻市小船越/芳賀正利

啓蟄や田畑に人の影動く   石巻市吉野町/伊藤春夫

春の日や野に集まれと手招きし   石巻市門脇/佐々木一夫

寒椿落つつくばいの水一輪   東松島市矢本/菅原れい子

手のひらに千切る真綿の白木蓮   石巻市二子/北みなみ

梅咲くも軒端に雪ののこりけり   石巻市三ツ股/浮津文好

名残り雪震災遺構我が母校   石巻市元倉/小山英智

福寿草一輪咲きて笑顔湧き   東松島市矢本/奥田和衛

今日咲こう迷いを捨てて福寿草   石巻市中里/須藤清雄

歳時記を開けたまま寝る春炬燵   石巻市新館/高橋豊

寒風や真一文字に進む雲   石巻市中里/大谷キク

つややかに雪のたわめる寒椿   石巻市丸井戸/佐々木あい子