俳句(4/24掲載)

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【石母田星人 選】

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たたかひの空を遥かに春田打つ   石巻市相野谷/山崎正子

【評】時事俳句の持続性は危うい。だがこの現実を詠まずにはいられない。素材は戦争を扱いながらも、どう詩的に昇華させるか。その例がこの句に読める。

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樹木医の指のごつごつ桜咲く   仙台市青葉区/狩野好子

【評】この樹木医は高齢者でベテラン。咲いた桜は老木。そう語っているのは「ごつごつ」という表現。診断や処置を施した太い指が老木を優しくなでる。

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大小のマスク無言や通学路   石巻市小船越/芳賀正利

【評】小学校の入学式だろう。親子そろって式場に向かう。子供時代の一大イベントをマスクで過ごす。何とも残念な世の中だ。「無言」に全てを語らせる。

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再建の鳥居に桜吹雪かな   石巻市吉野町/伊藤春夫

おにぎりに梅干一個春の山   石巻市蛇田/石の森市朗

末黒野の匂ひまとうて帰りをり   石巻市桃生町/西條弘子

列島のどこかで地震や梅真白   石巻市広渕/鹿野勝幸

春雷や煙管の筒の寅の絵図   石巻市中里/川下光子

波の音からめて南風走り来る   東松島市矢本/雫石昭一

気がつけば離れ離れに潮干狩   石巻市新館/高橋豊

バギーよりサクッと小走り春の虹   石巻市開北/星ゆき

卒業式長き袂を振つてみる   石巻市小船越/三浦ときわ

高台に球音高く海光る   多賀城市八幡/佐藤久嘉

ローカル線遅延の告ぐる初音かな   石巻市丸井戸/水上孝子

氷瀑やザイルの先に声かけて   石巻市流留/大槻洋子

津波地蔵春呼ぶための薄ずきん   石巻市渡波町/小林照子

教はりし鶯笛や父の声   石巻市門脇/佐々木一夫

花ふぶき泪橋より小塚原   石巻市駅前北通り/小野正雄

雛壇をゆらす地震の初節句   石巻市丸井戸/佐々木あい子

芽吹くもの抱きしめている春の土   東松島市矢本/菅原れい子

花嫁の下駄の爪革春の土   石巻市蛇田/高橋牛歩

快速が貨車を追い抜く春夕焼   石巻市駅前北通り/工藤久之

山桜孫のぬり絵の一ページ   石巻市二子/北みなみ

和太鼓のばちの強さや春の空   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

船着場おこぼれ待つや子持猫   石巻市元倉/小山英智