コラム:私とロシア語

 ウクライナを巡ってロシアが世界中のメデイアに連日報じられる昨今、この国についてはさまざまな思い出があります。

 まずは第2外国語としてロシア語を選んだこと。理由は今でもわかりません。特に「ロシアびいき」でもなかった。もしかしたら生来のアマノジャク的性格が頭をもたげたのかも。ほとんどの友がフランス語やドイツ語を選ぶ中である。

 始まってみると、たいへんな言葉であることが分かりました。まず面食らったのはキリルという独特の文字。英語に代表される悩ましい冠詞はありませんが、名詞や形容詞などの格変化が複雑。とんでもない世界に迷い込んだと思ったものです。でも2年目でチェーホフの短編を原語で読むまでに。

 また、帰省するたび、そのころ工業港と呼ばれて石巻港に停泊中のロシア船に乗り込み、カタコトのロシア語で船員たちと交流をしました。

 さて、「ロシア」は英語で Russia(ラッシャ)と言いますが、「ロシア語」は Russian(ラッシャン)です。-ian で終わるのは他に Italy、Italian などがありますね。

 それに対して我が国 Japan の言葉は Japanese、中国語は Chinese、ベトナム語は Vietnamese(ヴィエトナミーズ)。東アジアの国々においては-ese で終わるものが多い...どうして? 今は亡き大学の先輩が私に投げかけた疑問ですが未だに分かりません。

 チェーホフを原語で読んで特に印象に残っているのは「たわむれ」という短編です。そり遊びの最中に主人公が、風の音にまぎれて好きな女の子に「君のことが好きだよ」とささやく言葉「ヤ バス リブリュウ」が忘れられずにいます。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)