俳句(5/22掲載)

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【石母田星人 選】

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佐保姫のくすりと笑ふ白き朝   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】佐保姫は擬人化された春のこと。その女神が白き朝を見て笑った。姫の目前には町を覆った夏霧。帰り支度をするようにほほ笑みで合図を送ったのだ。

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白鷺の嘴(くちばし)の雑魚身を反らし   石巻市二子/北みなみ

【評】白鷺が小さな魚をくわえている。その瞬間を巧みに活写した。白鷺の体全体から嘴へ、そして魚のくねる動きへと焦点を絞ってゆく。見事な描き方だ。

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柿若葉光となりて迫り来る   東松島市矢本/菅原れい子

【評】木に近づいたのは作者なのだが、柿若葉の方から迫ってきてくれたと感受した。柿若葉の美しさは見る人を元気にしてくれる。霊力さえも感じられる。

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夏つばめ屋号で呼べば応へけり   石巻市桃生町/西條弘子

夏近し潮風受けて岬馬   東松島市矢本/雫石昭一

草を刈る背にやはらかき暁の空   石巻市相野谷/山崎正子

うぐひすや学生寮の電子音   石巻市中里/川下光子

春神楽落ちない石の下に見る   石巻市蛇田/石の森市朗

蝦蛄むけば香り舞飛ぶ磯の波   石巻市門脇/佐々木一夫

焼き立てのパンの香りや春深し   仙台市青葉区/狩野好子

菜の花や瞳の奥の母笑まふ   石巻市駅前北通り/小野正雄

夜桜の闇に蠢く疫病かな   石巻市小船越/芳賀正利

青と黄の窓に折り鶴青嵐   石巻市広渕/鹿野勝幸

祖国捨て異国の丘の花いばら   石巻市渡波町/小林照子

みちのくの空いっぱいに鯉のぼり   石巻市吉野町/伊藤春夫

復興の堤防高し鯉のぼり   石巻市元倉/小山英智

この道を行けば古里蓬摘む   石巻市小船越/三浦ときわ

若々し鳥居の空を揚雲雀   石巻市開北/星ゆき

花いかだ宮戸の島を渡りけり   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

夜桜や漁火見ゆる日和山   石巻市山下町/浮津文好

水音にペンギンぴくり花の下   石巻市流留/大槻洋子

干物もルンバを踊る五月かな   石巻市蛇田/高橋牛歩

春の虹竿の滴がワルツ舞う   石巻市桃生町/佐藤俊幸

新社員座禅研修風かをる   東松島市あおい/大江和子

たんぽぽの土手に寝ころぶ頬ぬくし   石巻市丸井戸/佐々木あい子