コラム:アイソレーション上着

 「これ、好きにはなれません」と、リハビリの先生のTさん。届いたばかりのビニールの袋を前にしてため息をつきました。「この青色、目立ち過ぎるんですもの」。分厚い紙が添えてあり、よく知られたメーカー名のそばに大きな文字で「アイソレーション・ガウン」と書かれています。英語名も添えてあり" Isolation Gown "、直訳すると「隔離上着」。コロナ禍の中、リハビリを行う療法士が制服の上に羽織ることになっているガウンです。

 確かに目立つ青です。でも、それよりも僕が気になったのは「アイソレーション・ガウン」という言葉。医師とか看護師などがワクチンの注射などを打つ時に羽織るもの、テレビなどでよく目にするあのビニールのガウンです。

 さて、isolation(アイソレーション)という英語。「隔絶」「孤立」といった意味の難しい語です。island をご存知ですね。 s を発音しない独特の綴りです。語源を調べるとラテン語 insula に行き着きます。insular は「島のような」で、insularityは「島国根性」。

 さらには「半島」を意味する peninsula(ペニンシュラ)は pen+insula。 pen は「準ずる」pene が語源です。潮の満ち引きによっては島に近くなるという感じでしょうか。

 「英語の単語力をつけるには?」――よく聞かれる質問です。「時間をかけて辛抱強くやること。その際『出会い』を大切にする。遭遇した語をメモしていく。そうするうちに少しずつ増えていくと思います」

 Isolation Gown を日本語でどう表すか。「隔離上っ張り」などという言葉が浮かんでくるのですが、どうも「隔離」が重い。ここは「和洋折衷」で「アイソレーション上着」というのはどうでしょうか。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)