【石母田星人 選】
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青田波仙北耕土ひと嘗めに 石巻市小船越/三浦ときわ
【評】風に波打つ青田を見ると「風の幅」を思う。田んぼ一枚をなでゆく風は見たことがない。この句の風はさらに大きい。耕土を慈しむような祈りの風だ。
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力まだ残して落つる椿かな 石巻市流留/大槻洋子
【評】椿の花が丸ごと落ち、地に咲いているように見えた。その姿を「力まだ残して」と表現。「力」の一文字だけで、落ち椿のあでやかさを強調している。
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父の日や節榑の手と酌み交す 東松島市あおい/大江和子
【評】父の日に集まって酒を飲んだのだろう。その輪の中心には父。節くれ立ってごつごつしている手の持ち主だ。この手に育てられたことを誇りに思う娘。
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この星を億年照らす夏の月 石巻市小船越/芳賀正利
初夏や木霊の宿る幹の艶 石巻市相野谷/山崎正子
厨口たかんなの香と土の香と 石巻市桃生町/西條弘子
生節や黒潮騒ぐ金華沖 石巻市門脇/佐々木一夫
嵩上げに立ちて海原夏帽子 東松島市矢本/雫石昭一
ボート漕ぐ部員の胸に青嵐 石巻市新館/高橋豊
仰ぎ見る新樹と語る少女像 石巻市丸井戸/水上孝子
夏の雨止むや悠悠ちぎれ雲 石巻市蛇田/高橋牛歩
あけ放つカフェの窓辺や今朝の夏 仙台市青葉区/狩野好子
残雪の斑わずかに牧ひらく 多賀城市八幡/佐藤久嘉
帰りゆく雁に夕日の柔らかし 石巻市蛇田/石の森市朗
木道は歩荷に譲る尾瀬ケ原 石巻市吉野町/伊藤春夫
まひまひや雲を浮かべて遊びをり 石巻市中里/川下光子
青葉冷え喪の服を掛け一人者 石巻市開北/星ゆき
山々の萌える緑に朝日輝る 石巻市水押/阿部磨
新緑やなじみの顔も清掃日 石巻市広渕/鹿野勝幸
椅子を出し微睡む庭や若葉風 石巻市元倉/小山英智
春の園心は軽く躍動す 東松島市矢本/奥田和衛
うす暗き水面の霧や蒼深む 石巻市駅前北通り/小野正雄
青梅のぽとりと落ちて友の逝く 石巻市駅前北通り/津田調作
家系図が絶える空家に花菫 石巻市渡波町/小林照子
句作りも生きる支えや筍も 石巻市中里/鈴木きえ