コラム:「シェア」に魅せられて

 私が敬愛する相田みつをさんの言葉に次のようなものがあります。

 うばい合えば足らぬ
 わけ合えばあまる
 うばい合えば憎しみ
 わけ合えば安らぎ

 share という英語と出逢ったとき、真っ先に浮かんだのがこの言葉です。

 現代の目まぐるしい競争社会において「分かち合う」は洋の東西を問わず大切なことに違いありません。それをサラリと言ってのける share は私の好きな語の一つです。

 He shared his food with the poor. 彼は貧しい人々に食物を分けてやった

 "I don't have a textbook." 「教科書がないんだ」
 "Never mind, let's share." 「心配するな、一緒に使おう」

などはそのいい例と言えましょう。

 この英単語について教科書に次のような用法上の注意があったように記憶しています。《2人の間では between 、3人以上の間では among を用いる》。ただし、前者は厳格な規則ではなく、実際は between よりは with がよく用いられるようです。

 He shares an apartment with his brother. 彼はアパートを弟と一緒に使っている
 Why don't we share the expenses among us? 費用は私たちで分担しましょう

 英語を学び教える者として、「分かち合う」という日本語の美しさに心惹かれつつ、share にもそれに勝るとも劣らない魅力を覚えます。

 「カー・シェアリング」「シェア・ハウス」など最近は「シェア」が盛んになってきました。個人主義と言われる世相から限られた資源や物を有効に活用する「分かち合い」の時代へと変貌してゆくように思える昨今です。

 share と「分かち合う」...どちらも素敵な言葉ですね。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)