俳句(7/17掲載)

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【石母田星人 選】

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舞台ふむ金管の子や緑さす   石巻市開北/星ゆき

【評】コロナ禍で練習さえ難しくなった吹奏楽部。並々ならぬ努力でたどり着いた舞台。初夏の目覚めるような若葉の緑が、子どもたちの演奏を包み込む。

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鍬洗ふ水輪のめざす花菖蒲   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】水辺で鍬を洗い始めると、水輪が広がって花菖蒲へと向かって行く。花に届くまでの一瞬の描写。一瞬即永遠の波紋の姿。「めざす」が詩語となった。

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常夏の香りのせてや波の音   東松島市矢本/雫石昭一

【評】波の音に感じた常夏の香り。どんな香りなのだろう。常に近くの浜に行き五感を磨いている作者。だからこそ鋭敏な感覚で捉えることができたのだ。

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流されし浜が店の名穴子焼く   石巻市相野谷/山崎正子

氷山の崩れるごとく散る牡丹   石巻市吉野町/伊藤春夫

かたつむり石灯籠のてつぺんに   石巻市小船越/芳賀正利

はせを道青き息吐く青蛙   石巻市桃生町/西條弘子

油照太陽掴むショベルカー   石巻市丸井戸/水上孝子

全集の活字小さし梅雨の闇   石巻市蛇田/高橋牛歩

瀬の音に調べ合せて河鹿かな   石巻市門脇/佐々木一夫

さくらんぼさんざめく葉に守られて   仙台市青葉区/狩野好子

女川へ列車一両雲の峰   石巻市流留/大槻洋子

夕焼けや景色変りて絶景に   東松島市矢本/奥田和衛

この星の混乱混迷夏の月   石巻市広渕/鹿野勝幸

お洒落してあをき白夜の石畳   石巻市中里/川下光子

虫籠のやっとの二匹逃しやり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

水しぶきプール開きの子ら眩し   東松島市あおい/大江和子

摘草や母の目籠は今我が背   石巻市新館/高橋豊

中尊寺めざして行けば緑さす   東松島市矢本/菅原京子

浜昼顔かえらぬ人を咲いてまつ   東松島市矢本/菅原れい子

行事消え浴衣のそでも閉じたまま   石巻市桃生町/佐藤俊幸

梅雨寒や小首かしげて鷗鳴く   石巻市中里/須藤清雄

足元に来て灯を点す螢かな   石巻市元倉/小山英智

繁茂する庭木に涼風通り来ぬ   石巻市駅前北通り/津田調作

七変化きょうは薄紅あざやかに   石巻市三ツ股/浮津文好