俳句(7/31掲載)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

【石母田星人 選】

===

風死して棒立ちとなる風車かな   石巻市桃生町/西條弘子

【評】上品山に建つ風車か。街からの遠景ではなくそばで見上げている構図。風がやみ、耐え難い暑さの中、直立した風車が極限的肉声を発しているようだ。

===

麦秋や大地のどこか水流れ   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】黄金色の麦畑。日中は乾いた音を立てて風が渡る。夜には同じ風音が雨のように聞こえる。そんな夜の景と読んだ。麦秋の力感が鮮明に伝わってくる。

===

一輪を揺らして落とす黄雀風   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】黄雀風(こうじゃくふう)は陰暦5月に吹く南東の風。この風の吹く頃、海の魚が黄雀(雀のこと)に変身するという言い伝えがある。落花の風に雀の存在を感じた作者。

===

蟻の道富士裾野よりつづくなり   石巻市小船越/芳賀正利

雲の峰上品山頂抱へこむ   石巻市蛇田/高橋牛歩

星の匂ひしみ込ませたる夜干し梅   石巻市相野谷/山崎正子

梅筵小さき聖域縁先に   仙台市青葉区/狩野好子

梅雨きざすしわりしわりと箱つぶれ   石巻市開北/星ゆき

看護師の白さ際立ち梅雨あける   多賀城市八幡/佐藤久嘉

あぢさゐや算盤塾の畳部屋   石巻市中里/川下光子

長らえて此の世に住めば汗流る   石巻市駅前北通り/津田調作

流蛍や八十路の坂を導きて   石巻市門脇/佐々木一夫

朝顔や微笑み返す深き紺   東松島市矢本/雫石昭一

大銀河母星子星幾光年   石巻市駅前北通り/小野正雄

ふる里の灯のやはらかし青田闇   石巻市小船越/三浦ときわ

ひとときの雨は浮きぐさ掻き乱す   東松島市矢本/菅原れい子

夕焼の移ろひ飽かず窓のそば   石巻市広渕/鹿野勝幸

老鶯やあと一息の胸突きに   石巻市流留/大槻洋子

ラムネ飲む音も涼しきガラス玉   石巻市吉野町/伊藤春夫

菖蒲湯や傷増えし身をそっと浸け   石巻市新館/高橋豊

遠き日の祖母に肩かし梅雨明ける   石巻市渡波町/小林照子

片かげり辿る細道光堂   石巻市元倉/小山英智

リハビリの終えし安堵の昼寝かな   石巻市中里/鈴木きえ

風薫る畑仕事もはかが行く   東松島市矢本/奥田和衛

蚊帳の中やさしき風と子等ねむり   石巻市流留/和泉すみ子