俳句(7/3掲載)

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【石母田星人 選】

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瑠璃鳴くや友の面影十一年   東松島市矢本/雫石昭一

【評】「頭のところがコバルトブルーなのが雄で、鳴き声もよく通るのですぐに分かるよ」。そう教えてくれた友。オオルリの声を聞くと彼の笑顔が浮かぶ。

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梅雨晴やジャングルジムの声膨れ   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】梅雨さなかの公園。ジャングルジムはまるで雨だれ製造機のようだ。つかの間の晴れが広がると、今度はたくさんの子どもたちで歓声製造機となる。

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どくだみの除きし後の匂ひかな   石巻市小船越/芳賀正利

【評】わずかでも茎や葉をちぎると強烈なにおいを発するどくだみ。除草の後、何日か過ぎているのかもしれない。それでも消えぬ存在感を巧みに表した。

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鐘の音の長き尾のあり走り梅雨   石巻市相野谷/山崎正子

【評】中七の「長き尾のあり」は、実際の鐘の音が聞こえなくなってから感じた音を詠んでいる。つまり現実と非現実の音感の妙。空間を大きく使って好感。

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ゆったりと物言う人と梓川   石巻市吉野町/伊藤春夫

【評】上高地を形成して流れる梓川。無季句だが、梓川の清流の印象を当季として読んだ。涼感あふれる早い流れの川音と、スローな語り口の対比が面白い。

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とりなしの婿のひとこと若葉風   石巻市開北/星ゆき

素直とは正にこのこと葱坊主   多賀城市八幡/佐藤久嘉

九条葱蒔きたる庭の芒種かな   石巻市新館/高橋豊

結葉の静かなそよぎ杣の道   仙台市青葉区/狩野好子

西方寺万緑を抜く五重の塔   石巻市小船越/三浦ときわ

夏の川豊里町の洗堰   石巻市蛇田/高橋牛歩

百翁の抑留ばなし梅雨夕焼   石巻市桃生町/西條弘子

屹立の矩形の窓や緑さす   石巻市丸井戸/水上孝子

夕立の止む時も又いさぎよし   東松島市矢本/菅原れい子

蛍飛ぶ人家の灯火なつかしき   石巻市中里/川下光子

こびりつき消せぬソーラン夏鷗   石巻市門脇/佐々木一夫

ワイパーの動き滑らか梅雨に入る   石巻市流留/大槻洋子

竹の子の山ほど積まれ猫車   石巻市中里/鈴木登喜子

無人駅一輪挿しにバラの花   石巻市元倉/小山英智

老の身やいまだ決め得ぬ夏衣   石巻市中里/鈴木きえ

夏の浜うさぎになりて子らはゆく   石巻市流留/和泉すみ子