コラム:熱中症、節電 ― エアコンは贅沢?

 暑い、どうしても暑い! 新聞に目を通すか、ぼんやりとテレビを見るしかない。新聞の紙面やTVの画面に踊るのは「熱中症」と「節電」の2語。そして、どちらにも共通するのは「エアコン」だ。

 70歳以上の高齢者の熱中症が増加、それによる死亡が頻発している。原因の多くがエアコンの使用を頑なに拒んでいるためという。終戦直後生まれの僕たち「団塊の世代」、豊かさの申し子ともいうべき集団がどうして?

 子供の頃、暑ければ海や川で水遊び、扇風機に当たりながらスイカや氷菓子を頬張った。夜は窓を開けて蚊帳に潜り込んで寝た。どこの家もそうだった。気の利いた家には氷を入れた「クーラー」があったが、「エアコン」なぞなかった。いつしか「エアコンは贅沢」が頭に刷り込まれてしまったらしい。

 言葉の話に移ろう。日本語と英語を戦わせてみるのは面白い。

 まずは「熱中症」。英語では heat stroke と言う。「熱中症」vs.「heat stroke」、これは英語の勝ちだろう。「暑さが一撃を食らわす」と読める。「熱中症」ではどんな病なのか分からない。「熱中」することは悪いことなのか?(もっとも、ラジオ作りに熱中するあまり、つい夜更かしをしてアタマがふらふらになったことがあるが)

 次の取り組みの片方は「節電」だ。対する英語を調べてみよう。研究社の和英大辞典をめくる。「saving electricity」(電気を節約する)、これなら互角だ。分かり易い。

 次に登場するのは「power saving」。 power って「力」! 力を節約してどうするとゆうのだ。実は、 power には「電力」という意味がある。恥ずかしながら、このことを知ったのは大学受験の時。今でも「電力」を power と訳すことには抵抗がある。ご同輩はどうであろうか。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)