コラム:ゲリラ考

 「豪雨によって川が一気に増水」。メディアがこのように報じることが日常茶飯事になりました。時おり雹(ひょう)(英語:hail )が降ったり、予期せぬタイミングで大雨になったりと今年の梅雨は「しとしと」だけではありません。「ゲリラ豪雨」という言葉が気象用語としてすっかり定着したようです。

 「ゲリラ」は、スペイン独立戦争において、ナポレオン軍に対抗したスペイン軍がとった guerrilla(ゲリーリャ)=小さな戦(いくさ)に由来。「ゲリラ戦」において活躍する、正規ではないごく少数の部隊のことを「ゲリラ」と言います。敵と正面から対峙するのではなく、待ち伏せなどの奇襲攻撃を仕掛ける戦法で敵を撹乱(かくらん)。現在では「突然」「前触れ無く」といった意味で使われることが多いようです。

 スペイン語で「戦争」は guerra(ゲ-ラ)です。「戦争と平和」は" Guerra y paz"と表します。

 私が最高傑作として幾度も観た映画に『アラビアのロレンス』( Lawrence of Arabia:イギリス、1962年)がありますが、主人公の T.E.ロレンスが取った戦法は、オスマン帝国との正面からの衝突ではなく、神出鬼没に攻撃するというまさにゲリラ戦術といえるものでしょう。つまり、小規模な部隊を運用して、臨機応変に奇襲、待ち伏せ、後方支援の破壊等、撹乱や攻撃を行う戦法です。

 なお、現在、日本の警察では施設などを攻撃する対物テロを「ゲリラ」、個人を標的とする対人テロを「テロ」と区分しています。「ゲリラ」に当たる日本語を考えてみました。「だしぬけな」「不意をつく」「唐突な」「裏をかく」でしょうか。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)