俳句(8/28掲載)

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【石母田星人 選】

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雲海に脚投げ出してコッペパン   石巻市流留/大槻洋子

【評】登ってきた眼下には雲海。その海に脚を投げ出しての休憩だ。広大な景の中で巨人になったような爽快感。コッペパンと雲の質感の類似が楽しい。

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うす暗き田面豊かに蚯蚓鳴く   石巻市駅前北通り/小野正雄

【評】実際に蚯蚓(みみず)は鳴かないが、俳諧では鳴かせてしまう。夜の田んぼのそばを通ると蚯蚓たちのこえが聞こえた。「今年は豊作だよ」「うん間違いない」。

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怖がりて兄に掴まる夜振かな   石巻市新館/高橋豊

【評】夜振の技は代々受け継がれているのだろう。兄にすがったこの子も、後に一人前になり次を導く。生活に根差す継承の深さやぬくもりが感じられる。

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かなかなや大川小のレクイエム   石巻市蛇田/高橋牛歩

追悼の川面きらめく大花火   石巻市相野谷/山崎正子

はしやぐ児のこゑ打ち上がる花火かな   石巻市丸井戸/水上孝子

帰省子の北上川へまつしぐら   石巻市小船越/三浦ときわ

夕焼や大河の水面茜色   石巻市小船越/芳賀正利

渓流に浸すハンカチ津軽晴   石巻市桃生町/西條弘子

廃船に波打ち返す夏の果   石巻市中里/川下光子

膝がしら咲く乙女らの素足かな   石巻市開北/星ゆき

機の堕ちた不忘山から雲の峰   多賀城市八幡/佐藤久嘉

青白の折り鶴あまた夏の雲   仙台市青葉区/狩野好子

秋西日影長くしてツーリング   東松島市矢本/雫石昭一

波尖る海を眼下に盆の墓   石巻市蛇田/石の森市朗

野良犬もとぼとぼ歩く敗戦日   石巻市吉野町/伊藤春夫

掻きむしる形の雲の大暑かな   石巻市広渕/鹿野勝幸

ひたすらに吾も我もと蝉時雨   石巻市中里/須藤清雄

白檀の香り仄かに盆支度   石巻市門脇/佐々木一夫

一振りの塩を効かせて衣被   東松島市矢本/菅原れい子

茄子胡瓜里のみやげの帰路支度   石巻市元倉/小山英智

鴉群れ祭の川面乱れ飛ぶ   石巻市駅前北通り/津田調作

香りよし姿よしなり百合の供華   石巻市中里/鈴木きえ

はまぼうふ香り広げて海開き   石巻市渡波/菅原冨喜子

ずんだもちすり鉢浮かぶ母のわざ   石巻市泉町/佐藤うらら