【石母田星人 選】
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遠花火木立のかげに夜の闇 仙台市青葉区/狩野好子
【評】遠くの花火を言った後に、近くの木立の闇の存在に注目している。遠花火と近くの闇の相互作用、相乗効果によって一句の空間がぐんと広がっている。
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やり場なき怒りの中に水を打つ 石巻市流留/和泉すみ子
【評】喜怒哀楽は直に表現せず、感じ取ってもらうべきだ。だがここは直接が効果的。暑さのほかに山のようにある日常の怒りなのだ。「中に」の表現が巧み。
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床の間の水墨画より水の音 石巻市小船越/芳賀正利
【評】秋を身近に感じたことで生まれた水の音だ。有季を墨守する作者だが、たまに無季の句をつくる。季語に頼らずに季感を表そうとする試みの一句だ。
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語部の襟足伝ふ玉の汗 東松島市矢本/雫石昭一
老い半ば欲は静かに落し水 石巻市桃生町/佐藤俊幸
蝋涙の匂ひかすかに送り盆 石巻市小船越/三浦ときわ
水葵ゆふべの沼は星の壺 石巻市相野谷/山崎正子
秋天へ空気震せ航空祭 東松島市あおい/大江和子
できぬできぬと弱音吐いても月は味方 石巻市渡波町/小林照子
かなかなに急かされてゐる畑仕事 東松島市矢本/菅原れい子
戦なき刻を次代へ終戦日 石巻市広渕/鹿野勝幸
忘草年経るごとに濃くなりて 石巻市門脇/佐々木一夫
錠剤の口に残れる夏の月 石巻市中里/川下光子
リハビリを終へて家路や秋扇 石巻市元倉/小山英智
秋澄めば空に触れたき電波塔 石巻市流留/大槻洋子
熟睡に体力が要る熱帯夜 石巻市開北/星ゆき
残業の夫の靴音星月夜 東松島市あおい/下山慶子
逢んとて車走らす星月夜 石巻市蛇田/高橋牛歩
送り火の大の字となる午睡かな 多賀城市八幡/佐藤久嘉
今朝の秋飛行機雲の棚引いて 石巻市新館/高橋豊
紅の旗白河越えし秋の天 石巻市丸井戸/水上孝子
新涼の関越えて来る優勝旗 石巻市桃生町/西條弘子
雲の峰夕日に染まりてパラダイス 東松島市矢本/奥田和衛
お茶の間に桔梗二度目の開花待ち 石巻市水押/阿部磨
秋刀魚来た高値の札を身に背負い 石巻市駅前北通り/津田調作