コラム:さまざまな「旅」の英語

 新型コロナのため中止となっていたツール・ド・東北が2年ぶりに開催の運びとなりました。ツール・ド・フランス( Tour de France )はフランス語で「フランス一周」という意味。主にフランスを舞台にして行われる自転車ロードレースで、FIFAワールドカップ、オリンピックと並び、世界三大スポーツイベントの1つと称されることもあります。

 13世紀初頭から約300年にわたり、英国ではフランス語、英語の2言語が併用されました。長年にわたるフランス語の流通は英語に少なからず大きな影響を与えたのです。

 例えば、英語で tour (ツアー)は観光・視察などのため各地を訪れる周遊旅行を表します。" Bon voyage. "(ボン ヴォアヤージュ=「気をつけて行ってらっしゃい」)は現代でも用いられる表現です。 voyage は「船旅」という意味の英語の語彙にも入っています。

 journey はフランス語起源の言葉。かなり長い、時として骨の折れる旅で、必ずしも帰ってくることは意味しない。 journey's end 「旅路の終わり」のように、長い人生を比喩的に表す場合にも用いられます。源は journal (日誌)と同じです。シェークスピアの悲劇「 Othello 」の最後に Othelloが死を前にして吐く" This is my journey's end ..."が忘れられません。

 旅行と言えば「修学旅行」。英語では school excursion と表すのが一般的。 excursion は多くの人が一緒に行なう短い旅行。ラテン語で「外に走り出ること」が語源とのこと。

 travel は旅を意味する最も一般的な英語ですが、「旅する」とだけ覚えてしまうと、次のような例文の場合は困ってしまいます。
  Light travels faster than sound. (光は音よりスピードが速い)

 他に、用事か遊びで出かけ,また帰ってくる旅行に trip があります。例えば a business trip は日本語の「出張」にあたります。

 以上のように旅を表す英語にはいろいろありますが、一部を除いて意味の上で厳密な区分けはないので、あまり悩まずに自由に使っていいでしょう。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)