コラム:英国はイングランド?

 先々週は、エリザベス女王の葬儀の模様を報じるBBCのテレビ画面に釘付けになっていました。キャスターおよびレポーターの話す英語はコチコチの British English ...国を挙げての一大イベントにふさわしいものでした。

 その中で「なるほど」と思ったものがあります。その一つがUKです。番組の中で自分の国を話題にする場面がありましたが England というのは皆無でした。

 英語は English 、それを母国語とする英国は England ...英語を習いたての頃、このように教わった御同輩も多いのでは?

 1536年にイングランドとウェールズが統合し、1707年にスコットランドが加わってグレート・ブリテン連合王国( the United Kingdom of Great Britain )が成立し、1801年に北アイルランドが加入して現在に至るのです。つまり、 England は16世紀初頭ウェールズと統合するまでのブリテン島の一地域の呼称というわけです。

 TV番組ではチャールズ新国王が即位に先立ちウェールズまで足を運び、ウェールズ語で演説する様子が報じられました。皇太子時代、イングランド王位の男性継承者として初めてプリンス・オヴ・ウェールズの称号を与えられたのです。

 もう一つ、何度も耳にした単語に「キュー」があります。 queue という奇妙な綴りの言葉です。「順番を待つ人や乗り物の列」を表します。

 ロンドンのウエスト・ミンスター寺院に安置された女王を一目見ようと多くの人が並びました。単なる好奇心ではありません。夜を徹して何時間も立った後、ほんの数秒だけ棺の前に会釈をしたり祈りを捧げたり...このような一般の人々のありようは感動的でした。

 「並んでいますか?」と尋ねる場合、アメリカでは" Are you in line? "がよく使われますが、イギリスでは line の代わりに queue を使用します。" Are you in the queue? "この queue という言葉は「尻尾」を意味するフランス語に由来するとのこと。

 今回のこの体験を通して、イギリスという国およびその言葉について、少しばかり理解を深めたような気がします。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)