俳句(10/9掲載)

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【石母田星人 選】

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颱風来又三郎を先頭に   石巻市蛇田/高橋牛歩

【評】「風の又三郎」は「どっどど どどうど」と印象的に始まる。激しい風音を模したダイナミックな表現だ。台風の度にこの擬音のリズムが浮かぶ作者。

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じんじんと磁気を放ちて秋の蜂   石巻市小船越/三浦ときわ

【評】秋には動きが衰えるとされる蜂だが、実際はそうでもない。「じんじんと」は羽音。その連想から突拍子もない「磁気を放つ」の詩的表現が生まれた。

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望の夜や小さき団子を手土産に   仙台市青葉区/狩野好子

【評】今年の十五夜は晴れ間が広がり、美しい月を眺めることができた。作者が向かっているのは月見の席。月見団子を提げていそいそと歩く姿が愛らしい。

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まつさきに暮色の届く紅葉山   石巻市相野谷/山崎正子

夕闇や弾けて落つる栗の音   東松島市矢本/雫石昭一

ジャズフェスのラの音の刻秋暑し   石巻市丸井戸/水上孝子

夕空の低空飛行雁の群   石巻市小船越/芳賀正利

芋の露ころがすほどの風ありき   東松島市矢本/菅原れい子

晩学のペンは未知へと花野かな   石巻市開北/星ゆき

震災の古里遠き鰯雲   石巻市中里/川下光子

追いかけて追いつけぬもの秋の雲   石巻市流留/大槻洋子

出目金魚茜の雲を食わんとす   石巻市蛇田/石の森市朗

霧まみれ潮の香まみれ漁師妻   石巻市中里/佐藤いさを

町屋てふ鰻の寝床花芙蓉   石巻市桃生町/西條弘子

加速してストンと沈む秋夕焼   石巻市吉野町/伊藤春夫

満月のそばに寄る星孫に問ふ   石巻市広渕/鹿野勝幸

稲の穂に赤子の匂い蝗とぶ   多賀城市八幡/佐藤久嘉

老いの肩撫でて飛びゆくとんぼかな   石巻市門脇/佐々木一夫

野菜苗運ぶ農夫や涼新た   石巻市新館/高橋豊

釣る人も眺むる人も秋日和   石巻市元倉/小山英智

鈍行の鉄路の谺天高し   東松島市あおい/大江和子

うろこ雲夕日に染まり夢の国   東松島市矢本/奥田和衛

台風もうやむや消えて空青し   石巻市駅前北通り/津田調作

球児等の笑顔に癒やされ草むしり   石巻市渡波町/小林照子

秋彼岸おもひで語り泣き笑ひ   石巻市流留/和泉すみ子