俳句(11/20掲載)

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【石母田星人 選】

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わら屑に灸するやうに秋仕舞   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】「灸するやうに」の比喩には、感謝と労りの思いが乗る。その相手は実りを届けてくれた大地だ。心地よい温熱刺激で今年の疲れをとってほしいのだ。

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ざわざわと枯蘆原にしぐれ来る   石巻市小船越/芳賀正利

【評】枯蘆原も季語だがここの季語は「しぐれ」。「ざわざわ」は蘆を打つ時雨だろうが、別の大いなる存在をも感じさせる。風土性を以って迫り来る一句。

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「G線上のアリア」の余韻草もみぢ   東松島市矢本/菅原京子

【評】広大な空間が似合う句だ。例えば尾瀬ケ原。木道沿いを染め上げる草もみぢ。その輝きに包まれていつしか口ずさんでいた曲。感動の余韻に浸る作者。

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蔵王嶺の雲入れ替はり冬に入る   石巻市中里/佐藤いさを

山唄に紅葉も見せて舟下る   多賀城市八幡/佐藤久嘉

トンネルを抜けて薄の大海原   仙台市青葉区/狩野好子

今朝の冬五体に白湯のしみこみぬ   石巻市流留/大槻洋子

全身に日差ししみこむ大根引   石巻市桃生町/佐藤俊幸

そのままの被災の校舎冬隣   石巻市桃生町/西條弘子

張り詰めし朝空揺らす威し銃   石巻市相野谷/山崎正子

きりたんぽ串の小太きしぐれ宿   石巻市小船越/三浦ときわ

人形の発条軋む冬菫   東松島市新東名/板垣美樹

影長き山も足早冬仕度   東松島市矢本/雫石昭一

白菊や御仏に身を低うせり   石巻市駅前北通り/小野正雄

気嵐に強気と弱気見えかくれ   石巻市流留/和泉すみ子

胡桃割る叔母は末っ子隣町   石巻市中里/川下光子

風追うて風より軽きもみぢかな   石巻市門脇/佐々木一夫

秋気澄む上品山は雲したがへて   石巻市新館/高橋豊

風景を描きし影や秋の果   石巻市中里/鈴木きえ

鮭のぼる只一心に水をかき   石巻市中里/須藤清雄

武骨の手新米およがせとぎにけり   石巻市開北/星ゆき

秋惜しむゆふぐれの日よ樹肌照り   東松島市矢本/菅原れい子

茅葺の土間の干し柿薄灯り   石巻市元倉/小山英智

新藁で鉢巻き白菜整列す   東松島市矢本/奥田和衛

病歴も生きた証拠や菊活くる   石巻市渡波町/小林照子