コラム:local は「田舎」?

 身近なローカル線に目を向けたい

 10月14日付の河北新報のコラム「河北春秋」にこのような一節がありました。「ローカル」は日本語にすっかり定着しています。これについてとやかく申し述べるつもりはありません。ただ、この語の元となった英語の local には「田舎」という色彩がないのです。

 local は「場所の」を指す言葉で、そこから「土地の、地方の、地元の」という意味で使われます。バスや電車の「ローカル線」は、特定の地域を走る「その地方の路線」ということになり、各土地に止まることから「普通列車( local line )」も表します。

 例えば「ローカル番組」。「その地方の、その土地の」の話題を伝えると考えていいでしょう。「ローカル路線バス・乗り継ぎの旅」の場合も、際限のない地方ではなく区切られ限定された地域の中で移動することです。ポイントは「地方」ではなく「限定」「特定」であること。

 なぜ local が「田舎の」になったのか考えてみました。今でこそ「地方の時代」ですが、日本は長いあいだ東京や大阪などの大都市を中心に発展してきたように思います。一歩外に出るとそこは農村つまり「田舎」。皆さんはどう思いますか。

 「田舎の」は英語で rural と書きます。「地方」を指す際には region や district が適切です。なお、派生語の locality には「現場」「土地勘」などの訳語もあります。 a poor sense of locality は「方向音痴」だそうです。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)